本書の“オヤジ”とは、単純に年齢的なものではなく、“家族との向き合い方や仕事への接し方、
服装や体型に至るまでをより良き方向へ改善しようとする事を放棄してしまった者たち”の事を指している(本書より引用)。
本書では、これを“思考停止状態”と表現していた。
表紙は、「カイジ」などで有名な漫画家、福本伸行氏が手掛けている。
“ホリエモン”というニックネームで親しまれている堀江貴文氏の著書は、前作の「拝金」が素晴らしい出来だった事もあり、全て読むようにしている。
しかし、今回の作品「君がオヤジになる前に」は、読み進めていく過程でそこまで絶賛する程のものでもない内容だと感じていた。
だがこれは、あくまで“読み進めていく過程”での話。
という事で、まず私が“読み進めていく過程”で記そうと思っていた総評を書きたいと思う。
― 本書は、各冒頭で1人の一般男性の職種や生活状況、生き方、抱えている悩みなどが紹介され、その男性に向けて堀江貴文氏がメッセージを送るという構成になっている。
そのメッセージは、“仕事に対する考え方”や“今の時代”について、非常に勉強になる部分は多いものの、“人として必要な何か”が決定的に欠けているような気がした。
例えば、“子供なんて邪魔なだけだ”といった考え方を肯定している箇所がある。
こんな事を世の中の若い世代が鵜呑みにしてしまったらどうなるか・・・虐待、少子化、現在の日本が抱えている大きな問題をさらに加速させる結果になる事は明らかだ。
ここに述べた例は、数ある中のひとつに過ぎないが、いわゆる“堀江貴文哲学”を頭ごなしに押し付けすぎている。
堀江貴文氏のメッセージを“堀江貴文の人物像”として読み取った場合、それはそれで読み応えがある。
しかし、そこには日本、ひいては世界のコミュニティの中で絶対的に必要であるべき“人間味”というものが抜けているのだ。
これは、堀江貴文氏がビジネスを成功へ導くために排除してきた部分であると言える。
だから、本書を読むに当たって注意して欲しい事は、自分の中で培ってきたこれまでの生き方と照らし合わせながら
「これは正しい意見」「これは正しくない意見」というすみ分けをしていく必要があると思う。 ―
と、ここまでが本書を“読み進めていく過程”での私の感想だ。
しかし、最後まで読みきった後に出た感想は「してやられた・・・」という事だ。
堀江貴文氏の言葉を借りれば、読者として私が抱いた感想は“想定内”だった様だ。
これ以上の事を述べると本書の面白みを全て語ってしまう事になるのでこれくらいにしておくが、本書を手に取った人には是非、途中で読むのを止めず最後まで読みきって欲しいと思う。
自分自身を客観的に捉えつつ、読者の感情をうまくコントロールする“作家としての堀江貴文”を知る事ができるはずだ。
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