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福田ますみ でっちあげ

でっちあげ―福岡「殺人教師」事件の真相 (新潮文庫)

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【ジャンル】 ノンフィクション
【題名】 でっちあげ(文庫版)
【著者】 福田ますみ (ふくだ ますみ)
【発売日】 2009年12月24日
【出版社】 新潮社
【ページ数】 344ページ

総評

非常にショッキングな内容だった。
『でっちあげ』は、著者であるジャーナリストの福田ますみ氏が、実際に起きた“ある事件”の真相を追ったドキュメント作品だ。
皆さんは、『殺人教師』と呼ばれた福岡市の小学校教諭を覚えているだろうか。
2003年、朝日新聞に載った“ある事件”・・・

まずは、その一部を読んでみて欲しい。

【2003年6月27日 朝日新聞 朝刊 31ページ 886文字】
見出し『小学校教諭が小4児童いじめ 家庭訪問直後から』。

福岡市立小学校で、40代の男性教諭が4年生の男子に、「ミッキーマウス」や「ピノキオ」と称して鼻や耳を引っ張るなどの行為を繰り返し、学級担任を外されていたことが分かった。児童の親は、家庭訪問の際、教諭に、母親の曽祖父(そうそふ)が米国人であることを話したのを境に態度が変わったとしており、差別意識が背景にあると主張。学校側は「家庭訪問で『血が混じっている』など不適切な発言があった。問題になった行為との因果関係ははっきりしないが、人権意識が欠けていた」としている。―(後略)―

さて、これが初報道の記事のおおまかな内容だが、その後、児童の母親は『教諭によるひどい虐待の結果、息子は体の震え、嘔吐、腹痛などが止まらなくなった。直後に、非常に重度のPTSD(外傷後ストレス障害)と診断され大学病院の神経科閉鎖病棟に長期入院する事態となった。』と学校側に訴え続け、裁判にまで発展している。
男性教師が『血のけがれている人間は生きている価値がない。早く死ね、自分で死ね』と脅したため、児童は自宅マンションから投身自殺を図ったことさえあったという。

寒気のするようなひどい事件だと思わないだろうか。
教える立場である教師が、家庭の事情、しかも人種をきっかけに悪質ないじめを繰り返していたというのだ。
重度の病気を患うまでストレスをかけ続ける・・・実際の現場を想像するとぞっとする。こうしてこの事件は、単なるローカルニュースから、一気に全国規模へと広がったそうだ。

しかし、実はこの事件は全くの誤報だった。
信じられるだろうか。全国を騒がせた極悪非道な事件が誤報だったのだ。

さらなる詳細は、ぜひ本書を読んで欲しいが、心の底からマスコミの恐ろしさを実感した。とは言うものの、著者である福田ますみ氏も同じ土俵にいるジャーナリストであることは確かなので、どちらが真実なのかは100%は分からない。それは当事者以外に分かりようがないのだ。
しかし、もしこれが本当だったら衝撃的な出来事だ。

本書は、『殺人教師』事件の真相を追ったルポルタージュ作品。第6回新潮ドキュメント賞を受賞している。
2005年1月に新潮社より刊行されたが、その後の2009年12月に出版された文庫本には、「でっちあげ事件、その後」が追記されているのでそちらを買うのがお勧めだ。(記事:2010年12月14日)
 

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